実績・事例
モンゴル国ウランバートル市における血液輸送
モンゴル国ウランバートル市で、医療定期配送網構築を目指した輸血センターと病院間のドローンによる血液輸送を実施
エアロネクストは、Newcom Group、セイノーホールディングス株式会社、KDDIスマートドローン株式会社と協力し、モンゴル国ウランバートル市で、国立輸血センターとモンゴル国立医科大学付属モンゴル日本病院間の約9.5kmのルートにて、ドローンによる血液輸送の実証実験を実施しました(2023年11月)。この実験は、標高1,300mの地点と極寒の外気温-15℃の過酷な条件下で行われ、日本でいう「レベル4(有人地帯での補助者なし目視外飛行)」に相当する飛行を成功させました。
本実証実験は、モンゴル国民間航空庁(MCAA)、ウランバートル市、土地測量地図庁、気象環境調査庁の支援のもと、エアロネクストの運航技術チームによる徹底した準備と実地調査に基づき行われ、モンゴル国で初めて輸配送用途の飛行に正式な許可が下されました。これは、ウランバートル市の交通渋滞や道路インフラの問題に対する医療分野での解決策を模索する社会的に意義深い試みです。
また、この実証実験は、「モンゴル新スマート物流推進ワーキンググループ」の活動の第一歩として、モンゴルにおけるドローンを活用した配送網構築と新スマート物流SkyHub™の社会実装の可能性を探るものです。
実証実験概要
背景
モンゴルでは全人口の半数(約160万人)がウランバートル市に集中しており、物流、交通面では慢性的な渋滞、不十分な道路インフラ整備の状況のため、医療だけでなく経済活動にも悪影響が出ています。また、都市中心部での局所的なガソリン車利用により大気汚染も進んでいます。一方、所得水準の向上及びIT・通信環境の整備によるEC利用者の増加により、個別配送の需要は高まっています。
そこで、医療サービスを始めとする都市生活環境の改善に貢献するため、空の活用により即時性・経済性・環境面で持続可能性の高い物流インフラ構築の実現を目指し、本年9月に実施された「モンゴル新スマート物流シンポジウム2023」にて、モンゴル新スマート物流推進ワーキンググループが発足しました。
今回の実証実験は、モンゴル新スマート物流推進ワーキンググループによる活動の第一歩として、今後の医療分野におけるドローン定期配送網の社会実装を見据えて実施するものです。
目的
医療分野の市内での物資輸送においては、モンゴル国での唯一の輸血センターである国立輸血センターから各病院間への毎日の輸血用血液の車による輸送において、看護師の同行が必須かつ慢性的な渋滞の中、長時間の非効率な業務となっています。一方、即時性、緊急性が求められる血液を含む医療物資は、救急車を使った輸送が行われていますが、慢性的な渋滞ため、正確な輸送時間を予測できないだけでなく、所有数が限られる救急車両の本来の需要である患者搬送の機会損失につながっています。
輸血センターと病院間あるいは病院間でのドローン定期ルート構築が実現すれば、渋滞の影響を受けない時間と品質が両立された即時性の高い物資輸送が可能となり、ひいては看護師の労働環境が改善ならびに医療の持続可能性及び質の向上が期待できることから、今回、国立輸血センターからモンゴル国立医科大学付属モンゴル日本病院へのドローン飛行の実証実験を行い、定期ルートの第1本目とするべく検証を行うものです。
実施内容
今回のドローン配送は、ウランバートル市内の国立輸血センターとモンゴル国立医科大学付属モンゴル日本病院間の片道4.75kmの距離を往復で合計約9.5kmの飛行で輸血用の血液を配送しました。
機体はエアロネクストとACSLが共同で開発した、物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)最大5kg、最大飛行距離20kmの物流専用ドローンAirTruck*5を使用。通信はMobicomの通信(4G LTE)を使用し、機体の制御には、機体の遠隔制御・自律飛行を可能とする運航管理システムを活用します。なお、今回、日本から「リモート監視」をする体制で実施しました。
配送の流れは、国立輸血センターの看護師が、AirTruck専用の箱に血液と医療液のパックを温度管理下の梱包で収納し、AirTruckに箱をセットし、AirTruckは国立輸血センターの駐車場を離陸。片道4.75kmの距離をあらかじめプログラムされた通りに自動航行し、約13分後にモンゴル国立医科大学付属モンゴル日本病院の屋上に着陸して箱を切り離し配送し、バッテリーを交換後、離陸した国立輸血センターの駐車場まで帰還しました。配送物は血液パックと医療液2種計3種11パックで、セイノーHDの温度管理を伴う梱包のノウハウを活用し、常温と零下の2温度帯に分けた梱包で配送し、温度計測も行いました。配送された箱はモンゴル国立医科大学付属モンゴル日本病院の看護師がピックアップし、中身が無事に、また温度管理も問題なく届いたことを確認しました。
今後も、本ワーキンググループの活動を実施することで、まずはドローンによる医療定期配送網構築を目指すことから始め、モンゴルの社会課題や住民のニーズに沿った新スマート物流SkyHub™の構築による社会インフラの整備を推進し、モンゴルの社会課題解決に貢献してまいります。