実績・事例
敦賀市
敦賀市が抱える課題
敦賀市は総人口64,425人(2021年9月末現在)、面積は県内3番目の251.41km2で、地理的に典型的な扇状地形であり、市街地が中央に位置し、放射状に山間地域が広がっています。市街地はスーパーや飲食店などの商業施設や病院が集積しており利便性があるものの、放射線状に広がる山間地域では過疎化が進行しています。そういった地区の一つである愛発地区は古くは近畿と北陸を結ぶ物流の要所として賑わいをみせていましたが、現在は人口 716人 (318世帯)で、市街地からは3~9km離れており、過疎化が深刻化しています。昨年、地区内にあった唯一のコンビニエンスストアが閉店し、現在は商店も薬局もなく、特に買物が地域課題となっています。
新スマート物流SkyHub®の導入
2021年11月にエアロネクストはセイノーホールディングスと共に、敦賀市と敦賀市がめざす水素・再生可能エネルギー・ゼロエミ物流等の脱炭素化の取り組みによる高齢化や過疎化等の地域課題の解決に向けて包括連携協定を締結し、その後デジタル田園都市国家構想交付金Type1やを活用して、新スマート物流SkyHub®の社会実装を推進しています。
2022年1月には、市街地から離れた愛発地域に住む交通弱者等への買物支援を想定し、新スマート物流SkyHub®の構築に向けた「市街地・過疎地連結型ドローン物流」実証実験を実施しました。住民が専用アプリで注文した地元スーパーの食料品の詰め合わせのセットを、仮設のドローンデポ®(愛発地区公民館)から愛発地区の3ヶ所の仮設ドローンスタンド®までドローンでお届けしました。あいにくの雪が舞う天候の中でも、ドローンは安定して飛行し、無事配送を完了しました。
2022年8月には敦賀市金ヶ崎緑地及び東浦地区において、地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向け、交通弱者等への買物支援を想定したドローン配送実証実験を実施しました。
2022年10月には敦賀市愛発地区において「市街地・過疎地連結型」モデルとして、新スマート物流SkyHub®のサービスを開始しました。物資や商業施設が集積する市街地が中央に位置し、その周辺に放射状に山間地域が広がり過疎地域が点在する特徴を持つ敦賀市において、「市街地・過疎地連結型ドローン物流」の典型的なモデルとして社会実装をスタートしたことで、似たような特徴を持つ多くの全国の地域への展開の可能性を広げました。
ドローンデポ®
既存物流とドローン物流との接続点に設置される、ドローン配送・陸上配送ができる仕組みを持つ倉庫。新スマート物流SkyHub®における拠点となる。
→愛発地区内に、愛発公民館(旧愛発小中学校)の元給食室を改装して活用したドローンデポ1ヶ所と、市街地にドローンデポを1ヶ所構えています。
ドローンスタンド®
ドローン物流の起点および終点に設置されるドローンの離発着のための設備、場所。
→住民サービスや災害時利用も想定しつつ、定常的に共同配送の荷物を運べるように、集落に1か所の着陸ポイントという観点で、現在8ヶ所設置しています。(2024年3月時点)
実施中のサービス
敦賀市では、次のようなサービスを提供しています。(2024年3月時点)
オンデマンド配送サービス
カタログなどからの電話注文により、最短30分で注文の食料品や日用品をお届けするオンデマンド配送サービスです。ドローン配送拠点であるドローンデポ®︎のダークストア化の取組み、簡易的なコンビニの機能もあり、ドローンデポ®︎に、食料品、日用品、調味料など、お客様へのアンケートによる希望や購買予測により、商品を在庫し、お客様の注文に合わせて空から、陸から、最適な手段で配送するオンデマンドサービスです。
愛発地区では、お客様は約100アイテムの食料品、日用品から商品を選択の上、30分間隔に設定されたスロットの配送枠から配送希望時間枠と配送先のドローンスタンド®︎を選択して注文できます。配送料300円(税込)。基本ドローン便でお届けしますが、天候等の事情でドローン便が難しい場合はおクルマ便による陸上配送でお届けします。
地域の商店と連携した買物代行サービス
SkyHub®ECやカタログで買物した地域の商店やスーパーなどの商品が、希望日時に個宅に届く買物代行・配達代行サービスです。愛発地区では、近隣地域にある4つの地元スーパー(2024年3月時点)の約500アイテムの食料品、日用品から商品を選び、2時間間隔に設定された時間枠から希望時間枠を選択して注文できます。料金は配送料300円(税込)とサービス料(商品代金合計の10%)。午前10時30分までの注文を当日中にお届けします。
フードデリバリーサービス
敦賀市内の19の提携飲食店(2024年3月時点)のフードを配送料300円(税込)でドローン便あるいはおクルマ便にてお届けしています。
共同配送
2023年12月より地域の物流会社と連携し愛発地区の法人荷物の配送を開始し、その後別の物流会社と個人あて荷物の配送を開始しています。新たな物流会社との連携も進めています。
ドローン配送
陸送で非効率なエリアや場所への配送をドローンに置き換えることで配送効率向上を目指して実施中。
⚫︎2023年12月にはレベル3.5の開通フライトを実施。
⚫︎2024年3月末までに10ドローン飛行ルート開通済。
⚫︎牛丼や恵方巻などのプロモーションフライトも実施。
敦賀市の愛発地区は、少子高齢化や過疎化が進む中山間地域であり、数年前に地区に唯一あった商店も無くなり、地区住民の買物困難といった地域課題を抱えています。
そのような中、エアロネクストとスマート物流という取組に出会い、その課題解決に向けて、令和3年の連携協定の締結、ドローン配送の実証を経て、令和4年10月から社会実装を開始しました。
全国でも先駆けとなる取組であるため、地域住民の生活環境とサービスとの実体的なマッチング等、ネクストデリバリーとともに試行錯誤しながら、持続可能なまちづくりの形成に向けて取り組んでいるところです。今後も、スマート物流の先進地として、ラストワンマイル物流における効率化・脱炭素化とともに、地域課題の解決を目指していきたいと考えています。
また、全国的に物流の2024年問題に直面しており、地域物流の停滞が懸念され、物流企業にとって不採算エリアである過疎地域の住民のもとに荷物が届かない将来が予想されます。今後は、さらにスコープを広げて、地域物流サービス全体の維持・効率化に向けて、人手不足や採算性といった課題を抱える物流企業とも連携し、共同配送の本格的な運用に力を入れていきたいと考えています。
敦賀市企画政策部政策推進課嶺南Eコースト計画推進室係長
八原 和之 様