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ドローン配送の社会実装、着々と — 敦賀市でもサービス開始

2022年はドローン物流が、社会実装のフェーズに入りました。2021年に物流大手のセイノーHDさんと、ドローンとトラックなどの陸送を組み合わせた、新スマート物流「SkyHub®︎」を開発してから約1年半。今回は、2022年の最新動向をお伝えします。

「ドローンと陸送のコンビ」社会実装進む

2021年10月に山梨県小菅村で、主に2つのサービスの提供を開始しました。ドローン配送サービスと、買い物代行サービスです。人口660人の限界集落である小菅村には、商店が1つしかありません。

SkyHub®︎では、隣の市まで買い物に行って当日中にお届けするサービスと、ドローンの離発着地点に常備する100以上の商品を注文されたら即時お届けするサービスを、有償で行っています。

小菅村でのサービス内容は、前々回のブログでお伝えしたとおりですが、ドローンと陸送のコンビネーションによって、ドローン物流の社会実装を実現しました。2022年も、数多くの自治体さんが視察に訪れています。

小菅村でSkyHub®︎は、すでに住民の方の新たなインフラとして、定着しています。2022年の秋、コロナに感染した住民の方が、SNSにこんな投稿をしていました。

“コロナに感染して自宅療養になると、同居家族も自宅待機になる。生協で注文している食料以外で、ちょっとした食料品や日用品が欲しいとき、SkyHub®︎の買い物代行でバナナや赤ちゃん煎餅、トイレットペーパーなどを注文した。商品は玄関に置いておいてもらえて、すごく助かった。”

私たちは北海道上士幌町でも、実証を含むサービス提供を開始しました。上士幌町は、新スマート物流SkyHub®︎の2つめの拠点。“SkyHub®︎上士幌町”は、“SkyHub®︎小菅村”を人口やビジネスの規模に合わせて最適化し、BtoCだけでなくBtoBも含め、よりマルチタスク化したサービス形態で、2023年春頃にはより充実した形をお披露目できる見込みです。

また2022年は、北海道東川町、島根県雲南市、茨城県境町、群馬県安中市など、複数の自治体さんと、次世代高度技術活用により地域課題の解決に貢献する新スマート物流の構築に向けた連携協定を締結したことを発表しました。今後は、小菅村や上士幌の社会実装で得られた知見やノウハウを活かし、全国展開をますます加速していきます。

茨城県境町との連携協定締結式(2022年10月)

2022年3月、「全国新スマート物流推進協議会」が発足

そんななか、上士幌町の町長である竹中貢氏らが発起人となって、2022年3月に「全国新スマート物流推進協議会」が発足しました。これは、北海道上士幌町、山梨県小菅村、福井県敦賀市、北海道東川町、茨城県境町の5自治体が広域連携協定を締結し発足した協議会で、実はいずれもSkyHub®︎の導入に向けて、積極的に動いてきた自治体さんです。

3月22日には、協議会主催の「デジタル田園都市国家構想を実現する 新スマート物流シンポジウム」が開催され、若宮健嗣デジタル田園都市国家構想担当大臣から応援メッセージ動画が流されるなど、官民一体となって新スマート物流を全国に広げる動きが具現化してきたことが伝えられました。オンライン配信では、全国の自治体から300名が視聴、アーカイブ配信はすでに1450回以上視聴されており、注目度の高さが伺えます。

デジタル田園都市国家構想を実現する 新スマート物流シンポジウム

いま、地域の存続そのものが危ぶまれるほどの人口減少が、日本各地で加速しています。「これまでのやり方を続けていては、生き残ることすら難しい」。このことを我々も、SkyHub®︎の取り組みを通じて改めて直視することができ、その解決に向けてアイデアを絞ってきたのですが、実際に地域にお住まいの方々のことを最も理解し、最も考えているのは、自治体のみなさんです。

5自治体さんが、SkyHub®︎の導入を進めてくださるのみならず、「自治体を中心に、官民や業界内外の垣根を超えたオープンな議論や情報共有を進め、新スマート物流という新たなインフラの地域実装を加速しよう」と動いて下さったことは、我々も非常に嬉しく心強く感じ、エアロネクストも会員として加入し理事を務めさせていただいています。

2022年10月、福井県敦賀市でサービス提供開始

2022年のSkyHub®︎導入事例を、1つご紹介しましょう。2022年10月、福井県敦賀市の「愛発(あらち)」地区で、公民館の一角をお借りして「ドローンデポ愛発」を開設し、ドローン配送も含むSkyHub®︎サービスの提供を開始しました。

敦賀市も、日本全国でよく見られる「二重構造」の街で、市街地と周辺に点在する過疎エリアで構成されています。愛発地区は、市街地から車で約15分の過疎エリアで、少子高齢化が進み、地域に唯一あったコンビニも閉店してしまいました。住民の方々へのアンケート結果を見ると、約8割が買い物に不便を感じています。

ドローンデポ愛発 入口

そこでドローンデポ愛発は、まずはSkyHub®︎ストア(小売店)として稼働スタート。ストアの商品ラインナップを記したカタログを配って、注文商品を配送するほか、公民館に来たついでにお買い物も楽しんでいただく、リアルなサービスも提供しています。

リアル店舗の運営は、もちろん容易ではなく試行錯誤の連続ですが、お客様のリアルな声を拾いやすく、品揃えやサービス開発のヒントも得られるため、サービス立ち上げ期には有効な手段だと感じています。将来的には、SkyHub®︎ストアのキャッシュレス化、無人化も検討していきますが、まずはやはりリアルでしっかり住民の方々とコミュニケーションを図り、受け入れていただくことが何よりも大切です。

地域のお客様とドローンデポスタッフ
ドローン配送でお弁当をお届け

最近では、市街地のお弁当屋さんと提携して、お弁当のドローン配送も始めました。リピーターさんからは、「クリスマスに子供が孫を連れて帰って来るから、お弁当をドローンで届けてほしい」といったご注文も。ドローンを子どもに見せたいというのは、どの地域でもいただく嬉しいリクエストです。

そして、クリスマスの日、リクエストにお答えしてお弁当とお菓子の入ったサンタの長靴をドローンでお届けしました。

クリスマスに配達されたお弁当とサンタの長靴
クリスマスのドローン配送の様子

また、小菅村で大人気の「買い物代行サービス」にも着手。年明けには、市街地にあるスーパーさんとも提携して、生鮮食品も含めた買い物代行サービスを本格始動できる見込みです。そして出前館さんとの提携では、敦賀市全域へのフードデリバリサービスの拡大も見据えています。

現在、ドローンデポ愛発で人気の商品は、お茶菓子や、カップラーメンやうどん、缶詰などの日持ちするものが多いです。これらは取り扱いやすいのですが、やはり地元のスーパーさんやお弁当屋さんなどと協業できると、お客様の満足度も一段と上がり、本当に地域の暮らしを便利に豊かに変えていくことができ、市街地のお店にとっても商圏の拡大、リピーター顧客の獲得にもつながると考えています。

ちなみに、2022年1月、雪が降り積もるなかで初めて実証実験を実施したときから、「災害時に地域を孤立させないための手段」としても、SkyHub®︎は有用だと確信しています。SkyHub®︎はまさに、「地方の魅力をそのままに、都市に負けない利便性と可能性」を目指すデジタル田園都市国家構想を実現に導く、新たなインフラなのです。

敦賀市で2022年1月に行った「市街地・過疎地連結型ドローン物流」実証実験の様子

新たなインフラを地域に実装していくために

新たなインフラを地域に実装していくためには、地域に根ざした草の根活動を担ってくれるスタッフの存在が欠かせません。小菅村にも、森さんや成田さんというキーパーソンがいますが、実は敦賀市にも、中野渡さんという心強い味方がいます。

いまドローンデポ愛発では、5名のスタッフが日々奮闘してくれていますが、中野渡さんはそのリーダー。敦賀市に移住して2年経つ頃、たまたま地元の広報誌に載せたドローンデポの求人情報を目にして、「ドローンを使うって面白いな」と連絡くださったのが出会いでした。

中野渡さん(ドローンデポ愛発にて撮影)

聞けば、中野渡さんは、もともとプロのスノーボーダー。岐阜県と福井県の県境にあるスキー場で、スノーボード教室運営もしてきたというキャリアの持ち主で、毎年11月から3月は敦賀市に居住してスキー場に通うという生活を、4年間も続けておられたというのです。

暖冬で、スノーボード教室を一時中断することにしたとき、2拠点生活もやめて家族とともに敦賀市に完全に移住し、自営業も軌道に乗ったなか、地域の新たなインフラという事業に興味を持ち、移住するほど愛した敦賀市のためにと、尽力してくださっています。

中野渡さんが、これまで培ってきた経験やスキルを活かして、顧客との信頼関係構築や、店舗運営、サービス開発を推進してくださっていることはとても頼もしいですし、同時に地域住民の視点と外部からの視点、両方を併せ持っていらっしゃるからこそ、新たなインフラを社会実装するという難題にもめげず、ともに立ち向かえるのかもしれないと感じています。

LTE通信対応の物流専用ドローン「AirTruck®︎」も販売開始

最後に、ドローン配送の社会実装を進めるにあたって、いつも頭を悩ませていた通信の問題が解決されてきたことも、2022年の大きなトピックです。2022年3月、ACSLと共同開発したドローン物流専用機体「AirTruck®︎」の量産を開始しました。

6月にはAirTruck®︎に、KDDI独自開発のドローン専用モバイル通信モジュール「Corewing01」を搭載し、KDDIのモバイル通信、運航管理システム、クラウドに連携した「AirTruck®︎ Starter Pack」の提供を開始したのです。敦賀市は、「AirTruck®︎ Starter Pack」の商業利用第1号になります。

続いて9月には、「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じて、KDDI、KDDIスマートドローンと資本業務提携を締結し、より長期的な協議や協業が可能になりました。2022年度内には14自治体で、「AirTruck®︎ Starter Pack」を利用したドローン物流をともに実施する予定です。

詳しくは、2022年11月にCNET Japanに掲載された、エアロネクスト代表取締役CEO田路とKDDIスマートドローン株式会社代表取締役社長博野氏の対談記事もお読みください。

「AirTruck®︎ Starter Pack」は、機体、運航管理、通信など、ドローン配送事業を開始するにあたって必要なものが、全てパッケージになった商品です。平時にはドローン配送を、有事には救援物資配送や災害状況把握などにも活用できることを、実証を通じて広くお伝えしていきますので、ご興味のある自治体さんや物流事業者の方はぜひ見学にいらしてください。

2022年12月、レベル4(有人地帯における補助者なしの目視外飛行)が解禁され、ドローン活用には大きな追い風が吹いています。2023年も、地域の活性化を目指して新たなモビリティインフラの導入を検討する自治体さんや、2024年問題に向けて省人化やエコに取り組む物流事業者さんと、ともに地域の最適解を実現していけたら幸いです。